
第四回「トレンチコート」
東京だろうが札幌、福岡だろうが街を歩けば、その風景に溢れているのはダウンコート。圧倒的にダーク系色のダウンを着こなし、ダウン以外を目にすることはほぼ無くなっている。
日本のダウンの最初の流行りは、確か五十年くらい前じゃなかっただろうか。
今流行っているモンクレは昔も主流の一つだったが、学生がバイトを少し頑張って買える範囲だった。だから今ショップでモンクレの価格を見ると「何で?」となってしまうのが昭和オヤジの感覚。街中でモンクレのロングコートを着ているアラサー、アラフォーの女性陣を見ても「無理しちゃってるなあ」の感覚でしかない。
街がダウンで席巻されるのを見ると、天邪鬼な俺は無性にダウンから離れたくなる。先日もクローゼットの奥から取り出したのがトレンチコート。
このトレンチコートも今時のダウンのように、バブル時代は昭和世代にとって必須のアイテムになっていた。
リッチなオヤジ達は当然山陽のバーバリー。都内のデパートには必ず売り場があった。「ボーナス一括払いで買っちゃった」てなセリフを良く聞いたものだ。
スナックのクローゼットはバーバリー柄が占めちゃうから、間違って他人のを着て帰っちゃうのは笑い話の一つ。そして人と同じじゃ嫌だと言う連中は、さらにお金をかき集めアクアスキュータムのトレンチコートをチョイスする。
俺はさらに人と同じのが嫌いなので、ラルフローレンを買っていた。そのラルフのトレンチコートを久々に取り出し眺めてみる。
いい味してるなあとしみじみ思う。
トレンチコートは、ハードボイルド路線の定番。映画「カサブランカ」のハンフリーボガードのトレンチ姿はもう涙もの。
ネットでこんなのを観ると震えちゃうよな。
あの頃は良かったなと思うのも、昭和世代の邂逅ね。
この冬、俺はトレンチを着るぞ!
防寒対策でインナーダウンは絶対着ない!と決めた俺だった。

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